紙木織々『それでも、あなたは回すのか』 感想

投稿:2020/12/06(日) 17:47 | 更新:2023/03/21(火) 11:26 | 小説

編集者になりたい。そんな夢を胸に出版社を受けるも、就職活動がまったく上手くいかず、ソーシャルゲーム開発会社に入社することになった友利晴朝。配属されたのは、社内で「サ終(サービス終了)」と呼ばれる赤字チームだった……。ユーザーの声がダイレクトに届く運営現場。課金。ガチャ。そして、炎上。急成長するエンターテインメント業界、その内幕を描く新時代のお仕事小説。

引用元:Google books


ソシャゲ運営のお仕事小説。

ソシャゲ運営の内情をかなり垣間見ることができ、非常に興味深かった。
馴染みのある人なら、「あるある」感も随所に感じられる。
昔のポチポチゲー、そして昨今のグラブルやプリコネを齧っていれば、まず間違いない。
作者が実際にソシャゲプレイヤーかつ開発現場の人で、役職も主人公と同じ。
それゆえ、特色を活かし、プレイヤーあるいは開発者視点に近い描き方がされている。

登場人物の個性は非常に強く、アニメ漫画的で、どこか既視感のあるキャラクター性を有している。
逆に言えば、どんな人物なのかがイメージしやすく、覚えやすい。
それは現実的でもあり、非現実的でもあり。
それも相まって、本作は「絵のないライトノベル」という表現がピッタリくる。

ストーリー展開は王道で社会人的なアツさ、大人の青春感も感じられる。
一方で、タイトルとの親和性はあまり感じられなかった。
「回す」から連想するガチャへの言及がもっとあれば、また違った印象だったかもしれない。

単純に、2次元的なお仕事小説かつソシャゲ運営の内情話と捉えれば、満足。