【小説】有馬頼義ほか『猫』 感想

投稿:2021/09/08(水) 23:59 | 更新:2021/09/09(木) 09:05 | 小説

猫と暮らし、猫を愛した作家たちが、思い思いに綴った珠玉の短篇集。半世紀前に編まれたその本が、クラフト・エヴィング商會のもとで、新章“忘れもの、探しもの”を加えて装いも新たに生まれかわりました。ゆったり流れる時間のなかで、人と動物の悲喜こもごものふれあいが浮かび上がる、贅沢な一冊。

引用元:Google books


猫に関する随筆集。
物語というよりは、エッセイ。
各作家の猫にまつわるあれこれが、まとめられている。

今から90年以上も前の作品もあったりする。
「呼ぶと尻尾で返事をする」など、今でも見られる猫の生態が垣間見える。
一方で、昔ならではの、なかなかえげつない描写もある。
なので、ほっこりしたい、とかには向かない。

ちなみに購入したのは古本だったが、ニオイがあった。
 

【小説】青山美智子『猫のお告げは樹の下で』 感想

投稿:2021/08/22(日) 19:00 | 更新:2021/08/22(日) 19:00 | 小説

ふと立ち寄った神社で出会った、お尻に星のマークがついた猫―ミクジの葉っぱの「お告げ」が導く、7つのやさしい物語。失恋した相手を忘れたい美容師、中学生の娘と仲良くなりたい父親、なりたいものが分からない就活生、夢を諦めるべきか迷う主婦...。なんでもない言葉が「お告げ」だと気づいたとき、思い悩む人たちの世界はガラッと変わっていく―。あなたの心もあたたかくなる連作短編集。

引用元:Google books


7つのちょっといい話。
「お探し物は図書室まで」同様、オムニバスに見えてちょいちょい繋がってるのが面白い。
同作に登場した人物も本作に登場しており、作品間においても繋がりがあるのだと判明した。
おそらく、他作品も同様の作りになっているのだろう。

話が7つも入っているので、1つずつのウェイトはやや小さめ。
そのせいか、各話終わり方がちょっと呆気なくも感じてしまった。
5話くらいがちょうどいいのかもしれない。

>中学生の娘と仲良くなりたい父親
タイトル「チケット」
これが一番面白かった
 

【小説】青山美智子『お探し物は図書室まで』 感想

投稿:2021/08/09(月) 22:02 | 更新:2021/08/09(月) 22:02 | 小説

お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか? 人生に悩む人々が、ふとしたきっかけで訪れた町の小さな図書室。悩む人々の背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。
明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。

引用元:Google books


いい話短編集。5編。
かつ、ひょんなところでそれらが繋がっている。

本屋大賞第2位も納得の出来映え。
爆発的に盛り上がったりするわけではないが、読んでいてじんわり、そしてストンと心に落ちていく。
「ハートウォーミング小説」とはなるほど見事な表現。
身近に感じられる文章がとても魅力的。

小町さんのイメージは完全にマツコ・デラックス。
物静かなマツコ・デラックス。
どうにも再登場っぽい雰囲気があったけど、他の作品にも登場するのかな?

著者の作品は、この手の形式のものが多い模様。
タイトリングや、表紙のミニチュア写真にも統一感があり、分かりやすい。
「猫のお告げは樹の下で」
「木曜日にはココアを」
なんかは書店で見かけて、手にとった事もあった。

お次は「猫の~」を読んでみようと思う。
それで気に入れば、作者買い。
 

【小説】相沢沙呼『invert 城塚翡翠倒叙集』 感想

投稿:2021/07/23(金) 11:28 | 更新:2021/07/23(金) 11:28 | 小説

すべてが、反転。

あなたは探偵の推理を推理することができますか?

綿密ば犯罪計画により実行された殺人事件。アリバイは鉄壁、計画は完璧、事件は事故として処理される……はずだった。
だが、犯人たちのもとに、死者の声を聴く美女、城塚翡翠が現れる。大丈夫。霊能力なんかで自分が捕まるはずなんてない。ところが……。
ITエンジニア、小学校教師、そして人を殺すことを厭わない犯罪界のナポレオン。すべてを見通す翡翠の目から、彼らは逃れることができるのか?

ミステリランキング五冠を獲得した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、待望の続編は犯人たちの視点で描かれる、傑作倒叙ミステリ中編集!

引用元:Google books


犯人側の視点で描かれる、「倒叙」作品が3編収録。
いわゆる、刑事コロンボとか、古畑任三郎とか、ああいう形式。

前作はいまいちハマらなかったが、今作はバチっとハマった。
それは、「既に主人公(翡翠)のキャラクター性を知っているから」に他ならない。
驚きの要素がそれ以外に逸れたため、分かりやすく感じたのだと思う。
また、単純に翡翠のギャップ萌え描写が魅力的だった。

脳内再生はやはり楓さん。前作表紙の印象が強すぎる。
アニメ化するなら、是非cv早見沙織でよろしくお願いします。

お話としては、特に3編目の「信用ならない目撃者」では、犯人の強さも相まり、スリリングだった。
読み終えてから全体を振り返ると、納得感があり、唸らされた。
ただ前作と比べると、やはり3分割している分、ひとつひとつのスケール感は乏しい。

展開として、既にパターンになりつつあるのかもしれない。
トリックさえ思い浮かべば、延々このパターンで作れそう。
ちょくちょく、翡翠の過去も仄めかしているし。
なので、3作目もありそう。

なお、これに合わせてか、前作がKindle版でお安く提供されている(¥1,000)
9月には文庫版も出るみたい。


餅月望『ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』 感想

投稿:2021/06/19(土) 22:11 | 更新:2021/06/19(土) 22:11 | 小説

崩壊したティアムーン帝国で、わがまま姫と蔑まれた皇女ミーアは処刑された。―はずが、目覚めた彼女は12歳に逆戻り??第二の人生でギロチンを回避するため、前世の日記帳を手に帝政の建て直しを決意する。手始めに忠義に厚い下っ端メイドと、左遷されたが優秀な文官を味方につけ、失敗した過去をやり直す日々が始まった。だが、ミーアの本音は「我が身の安全第一」。仇敵を遠ざけ、人脈作りに励むうちに、なぜか周囲の忖度で次々と奇跡が実現!やがて、身勝手なはずの行動は大陸全土の未来を大きく変えていくのだった...。保身上等!自己中最強!小心者の元(?)ポンコツ姫が、前世の記憶を武器に運命に抗う、一世一代の歴史改変ファンタジー!一万字超の書き下ろし新章&巻末おまけ「ミーアの日記帳」収録!

引用元:Google books


Kindle unlimited対象。
まず、絵がいい。
表紙絵に釣られる人も多いのではないだろうか。…はい。
しかし中身も表紙負けしておらず、面白かった。

いわゆる転生モノではあるが、どちらかというと、タイムリープモノ。
失敗した前世の経験を活かし、やり直し世界では無双する形。
ただ、ヒロイン・ミーアは基本的にポンコツな性格なので、一筋縄ではいかない。
そのキャラクター性が楽しい。

展開的には、周囲が勝手に勘違いして、ミーアがどんどん奉られていく。
その繰り返しによる天丼を楽しむ。
ツッコミ役でもあるナレーションも面白い。

全59話構成+αで、1話あたりがとても短い。
なので、区切って読みやすくもあり、また、あと1章、あと1章…と読み続けてしまう。
なかなか依存性が高かった。
ただし、同じような言い回しやセリフが多少目に付いた。

紙の場合は単行本サイズで、分厚く、かなり嵩張る。
Kindleの場合は、せっかくの美麗なカラー絵を楽しめないデメリットもあるが、持ち運びやすさ、読みやすさによる恩恵を受けられる。 
 

伊坂幸太郎『重力ピエロ』 感想

投稿:2021/06/17(木) 20:36 | 更新:2021/06/17(木) 20:36 | 小説

兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは―。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。

引用元:Google books


かなり長々と展開されるストーリー。
じっくり物語を味わうには、向いている。

反面、長丁場ゆえ展開の起伏が感じづらく、のっぺりした印象を受けてしまった。
結末も、引っ張った割にはこんなもの?と落ち着いてしまった印象を受けた。

また、本筋には直接関わらない、冗長な描写が多い。
それを本体の肉付けとして、味として楽しめるかどうかでも、評価が変わるかもしれない。

タイトリングと、冒頭と終わりの帰結は綺麗だった。
 

カズオ・イシグロ『クララとお日さま』 感想

投稿:2021/05/20(木) 23:04 | 更新:2021/05/20(木) 23:04 | 小説

ノーベル文学賞受賞第一作。カズオ・イシグロ最新作、2021年3月2日(火)世界同時発売! AIロボットと少女との友情を描く感動作。

引用元:Google books


ノーベル文学賞受賞作家の作品という謳い文句に釣られて。
一冊なんと、2,700円もする。ビビる。

近未来、AIロボットが一般的になった世の中。
人工親友(AF)のクララと、病弱な少女ジョジーの生き様が、クララ視点で描かれる。
翻訳本なので、特に会話部分において、海外映画のような雰囲気がある。

特徴的な専門用語が頻発するが、そのほとんどは明確な説明がない。
そのため、読者の想像力をフルに活用させられる。
しかし、お店の情景や家、風景など、自然と頭に浮かぶ叙述はさすがということか。

含まれるテーマは非常に多様。
AIの将来性、人との関わり方、家族、愛、友情、環境汚染、貧困、格差社会、などなど。
それをひとつの物語にギュっと濃縮し、なおかつ成立させている。
端的に、レベルが高い。

今後、より一層のAI時代に突入していく中で、是非とも思い出したい一冊。
色々と考えさせられる。

なお、映画化も決定している模様。
確かに、非常に映えそうな内容ではある。
雰囲気が極めて重要なので、敷居は高そうだが。
公開の際は見に行きたい。
 

伊坂幸太郎『グラスホッパー』 感想

投稿:2021/05/07(金) 21:29 | 更新:2021/05/07(金) 21:29 | 小説

「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに――「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説!

引用元:Google books


「ホワイトラビット」を気に入って著者買い。

殺し屋たちのチェイスゲーム。
場面転換を多用する技法は同様。
3者の視点と物語が、最終的には1本になっていくというもの。
この手の技法は、「群像劇」というらしい。

ややフィクション要素が強い。
非現実感も否めなく、そこをすんなり受け入れられるか否か。
ただ、描写はとても丁寧で、息を呑む迫力を感じさせる。

どうやらこのあとに2作、「殺し屋シリーズ」として続いているらしい。
が、それよりは同著者の別作品を読んでみたい。
 

町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』 感想

投稿:2021/05/06(木) 19:00 | 更新:2021/05/06(木) 19:00 | 小説

52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる―。

引用元:Google books


2021年本屋大賞受賞作。
「本屋大賞にハズレ無し」と思っているが、今年も例に漏れず、素敵な作品だった。

本作には様々なテーマが包含されており、それが評価に繋がったのかと思う。
愛情、友情、虐待などなど。
物語性と同時に、社会性も感じられる。
逆に、一点集中感は薄れてしまうので、そこは賛否両論かもしれない。

52ヘルツのクジラが誰のことを指すのか考えながら読むと、面白い。
 

森沢明夫『大事なことほど小声でささやく』 感想

投稿:2021/04/13(火) 19:00 | 更新:2021/04/13(火) 19:00 | 小説

身長2メートル超のマッチョなオカマ・ゴンママ。昼はジムで体を鍛え、夜はジム仲間が通うスナックを営む。名物は悩みに合わせた特別なカクテル。励ましの言葉を添えることも忘れない。いつもは明るいゴンママだが、突如独りで生きる不安に襲われる。その時、ゴンママを救ったのは、過去に人を励ました際の自分の言葉だった。笑って泣ける人情小説。

引用元:Google books


6人のオムニバスストーリー。ハートフル小説。
ジムを舞台にそれぞれは顔なじみであり、中心にいるのは、巨漢のオカマ、ゴンママ。
自らも葛藤を抱えながらも、心に刺さるアドバイスと人情節がとても魅力的。

悩みのテーマも多岐に渡る。
なにせ登場人物が、サラリーマン、漫画家、高校生、歯科医、社長、そしてオカマ。
そんな一見、まったく関連性のない人たちだが、ジムやスナックを通じてひとつのコミュニティとして描かれている。
そこから紡がれる物語というのも想像しづらいが、笑いあり涙ありの、良作。

ちなみに発見はブクログランキングから。
2015年の本だが、急に上位に来ていた。
こういう発見があるので侮れない。